2010年01月26日

「(無実と思ったことは)ないです」元検事、当時の認識きっぱり 足利再審(産経新聞)

 【元検事語る(5)】《宇都宮地裁で開かれている足利事件の再審第5回公判。捜査段階で菅家利和さんの取り調べを担当した森川大司・元検事の証人尋問が続いている。弁護側の質問は有罪の決め手となった、DNA鑑定の採用と自白に関するものに移る》

 弁護側「(平成3年12月1日に)足利署に任意同行された後、午後10時近くになっても自白をしていないと知らされていましたね」

 森川元検事「記憶にありません」

 弁護側「科警研(警察庁科学警察研究所)のDNA型鑑定の結果が突きつけられたため、菅家さんの容疑を固めたのですか」

 森川元検事「それだけでは終わっていません」

 弁護側「DNA型が一致するとは」

 森川元検事「一般的なことで」

 弁護側「一般的と…」

 森川元検事「私たちの世代にはDNAはなじみがないので」

 裁判長「一般的という意味で取ったということですね」

 森川元検事「はい」

 弁護側「一致したと決めつけて取り調べをするのは虚偽の自白を生む恐れがありますね」

 森川元検事「それだけで終わればそうです」

 弁護側「DNA型鑑定が誤っていると判明した今、取り調べは虚偽の自白を生む恐れがあり違法…」

 検察官「異議あり」

 《弁護側は誤ったDNA型鑑定と虚偽の自白の関連性を導き出そうとするが、検察官の異議が入る。興奮しているのか、矢継ぎ早に質問する弁護側に検察官が異議を申し立てる場面が増える》

 弁護側「質問を変えます。逮捕後のDNA型鑑定では半袖下着は対象試料になっていませんね」

 森川元検事「鑑定書のことは覚えていません」

 弁護側「DNA型鑑定では容疑者由来の試料と現場由来の試料を同時に用いて、電気を流すのは知っていましたか」

 森川元検事「DNA型鑑定は何度か行われていたので、どの段階のことをおっしゃっているのか」

 弁護側「科警研がDNA型鑑定に関する指針を出しているんです。一般的なことですよ」

 森川元検事「一般的であればそういうことです」

 弁護側「(DNA型鑑定に)半袖下着を用いなかったのは、科警研が積極的ではなかったからですか」

 森川元検事「分かりません」

 弁護側「では、DNAが常温で保存されると劣化することは知っていましたか」

 森川元検事「専門家でないので、厳密には分かりませんが、可能性は危惧(きぐ)していました」

 弁護側「正しい保管方法は知っていましたか」

 森川元検事「DNAに限らず化学反応を起こす試料は冷凍や暗いところなどいろいろあるかと」

 弁護側「知識はあったんですね」

 森川元検事「一般的に」

 《弁護側の質問はDNA型鑑定に関する質問から、菅家さんの“自白”に移る。弁護側の追及に、森川元検事の答えには「覚えていない」「分からない」という言葉が増えていく》

 弁護側「菅家さんの自白は虚偽のものですね」

 森川元検事「それは分かりません」

 弁護側「(平成4年)12月8日の取り調べで確認しています」

 森川元検事「虚偽と確認したわけではありません」

 弁護側「『作り事なのか?』というのはあなたの質問じゃないんですか」

 森川元検事「質問はしました」

 弁護側「納得したんですね」

 森川元検事「納得したわけじゃないです」

 弁護側「自白に質的な違いがあったと感じましたか」

 森川元検事「質的かどうかは分からないけれど、かなり違うことはあると思いました」

 弁護側「どう違うのですか」

 森川元検事「供述の変更ですが、細かいことは思いだせませんが、経験者でなければ言えないものがいくつもありました。想像では供述しにくい。簡単に言えば、犯人だから供述できたのではないかと思うものがいくつもありました」

 弁護側「菅家さんに第10回公判で『警察も私も聞いてないことをこまごま作り話する必要があったのか? 体験したから供述できたのでは』と聞いていますね」

 森川元検事「細かく覚えていませんが、否認に転じたのでかなり追及しました」

 弁護側「体験していないと供述できないという前提で追及したんですか」

 森川元検事「はい。全部ではないと思いますが」

 弁護側「真実ちゃん事件で少しでも無実と思ったことはないですか」

 森川元検事「ないです」

 《森川元検事は菅家さんを無実と思ったことはないとはっきりと否定した》

 弁護側「警察が別件の取り調べを録音したことは知っていましたか」

 森川元検事「記憶にないです」

 弁護側「反訳書は」

 森川元検事「見たことも聞いたこともありません」

 弁護側「(福島)万弥ちゃん事件(昭和54年の女児殺害事件)は拘留中にやってないと言いましたね」

 森川元検事「はい」

 弁護側「そのとき、どのような質問をしたのですか」

 森川元検事「『本当にやったのか』という聞き方だったと思います」

 弁護側「本人は『君は殺してないんじゃないか』といわれたと言っていますが」

 森川元検事「そういう聴き方はしていません。『本当に君なのか』という趣旨ですが、取り方によってはそうなるのかも」

 弁護側「万弥ちゃん事件では不起訴で釈放していますね。自白に疑問があったからですか」

 森川元検事「そういうことではありません。疑問というか裏付け捜査が十分できていないためです」

 弁護側「(長谷部)有美ちゃん事件(昭和59年の女児殺害事件)は逮捕も認めませんでしたね」

 森川元検事「はい」

 弁護側「自白に疑問があったからではないですか」

 森川元検事「有美ちゃん事件は証拠がかなり弱かったので、逮捕しても証拠固めの見通しもなかった。万弥ちゃん事件で釈放していたので、より慎重に判断しました」

 弁護側「菅家さんが家族に手紙を書いていたのは知っていましたか」

 森川元検事「知りませんでした」

 弁護側「逐一コピーを入手していたのではないですか」

 森川元検事「いえ、まったく」

 弁護側「取り調べを録音したのは上司の指示ですか」

 森川元検事「私独自の判断です」

 弁護側「録音が始まった(平成4年)1月28日が有美ちゃん事件について最初に聴いた日ですね」

 森川元検事「録音する前の(平成4年)1月23、24日に有美ちゃん事件のことを聴いたか定かではありませんが、聴いていなければそうです」

 弁護側「録音が、有美ちゃん事件の取り調べに支障はありませんでしたか」

 森川元検事「特になっていません。だから録音を続けました」

 弁護側「菅家さんに『死刑になる可能性がある』と話しましたか」

 森川元検事「死刑という言葉を使ったか記憶にありません。『一生刑務所から出られないか、それ以上かもしれない』とは言いました」

 弁護側「(平成4年)2月7日のテープで『自分の命で償うという覚悟で』と言っていますね」

 森川元検事「テープに入っていればその通りです」

 弁護側「菅家さんが証人(森川元検事)の取り調べを受けて、裁判で認めないと死刑になると考えた可能性はありませんか」

 森川元検事「分かりません」

 弁護側「菅家さんに3つの事件の自白パターンが似ていると言いましたね」

 森川元検事「テープに入っていればその通りです」

 《弁護側は録音テープの中から、森川元検事が指摘する自白の共通パターンをピックアップして読み上げ、記憶を掘り起こすように迫る》

 弁護側「証人は、(平成4年)2月13日の初公判前の2月4日と7日に『自白がパターン化している』と聴いていますが、初公判より前に(パターン化に)気づいていたのですね」

 森川元検事「言っているならそうです」

 弁護側「初公判前に、菅家さんの別件の自白が虚偽と考えたことはありますか」

 森川元検事「虚偽と考えたことはありません」

 弁護側「菅家さんが否認した時に『ずるいよ』と追及しましたね」

 森川元検事「本件ですか、別件ですか」

 弁護側「どっちもです」

 森川元検事「最後の取り調べでしょうか」

 《菅家さんの「否認」をまったく受け止めていなかったことを明らかにした森川元検事。当時の取調官が菅家さんに対して、どのように考えていたのかが垣間見えてきた》

 =(6)に続く

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2010年01月23日

怒声飛び交うゲーム賭博店の緊迫手入れ(産経新聞)

 夜のネオンがきらめく横浜市中区の繁華街の一角。神奈川県警生活保安課と伊勢佐木署が内偵捜査を進め、雑居ビル4階にポーカーゲーム機賭博店の存在をつかんだ。摘発を逃れるため、店名を示す看板などはなく、監視カメラや複数の鍵を付けるなど、あの手この手を使って警戒する店側。これに対し、取り締まりの手をゆるめない警察側。息詰まる神経戦の末、捜査員が賭博店を急襲した緊迫の「手入れ」の一部始終を目撃した。(大渡美咲)

 ■バールでこじ開け急襲

 「警察です。開けてください」

 今月6日午後10時過ぎ、横浜市中区の繁華街・福富町の雑居ビル4階にある店舗前。県警の捜査員約10人が、監視カメラのついた木製の扉の前でノックしながら何度も呼びかける。扉には以前あった店名とみられる「PUB姫」の看板がそのまま掲げられていた。

 店からの応答はなく、いらだつ捜査員。監視カメラに向けて捜索令状を見せながら、「警察だ開けろ!」と大きな声で叫んだ。らちがあかないと判断した捜査員は、あらかじめ用意していたバールで扉をこじ開け始めた。

 「いいか開けるぞ!」「開けるぞ!」

 2カ所付けられた鍵をバールを使って力ずくで壊しにかかると、ガンガンという大きな音が狭い廊下に響きわたる。

 数分たち、捜査員が2つ目の鍵を壊そうとした直後、観念したのか店側が扉を開けた。捜査員が雪崩を打って店内に突入。

 「(午後10時)21分入り!」「5千円賭博事実あり!」。捜査員の叫ぶような声が店内で飛び交う。客や店員には動かないように素早い指示が出された。

 ■客に僧侶も

 あぜんとする客と従業員に対し、捜査員は手際よく捜索を進める。店内は70平方メートルほどで、鏡張りになっている。窓などはないが逃げるためとみられる非常口があった。

 入り口に付けていた監視カメラとつながっているとみられるモニターも見つかった。その横で従業員の佐藤正彰容疑者(44)はうなだれていた。もう1人の従業員、藤枝久子容疑者(49)も、はじめは否認するようなことを言っていたものの、しばらくして容疑を認め、ぶぜんとした表情で椅子に座っていた。

 店内にはポーカーゲーム機が9台あった。ゲーム機の画面では、「GOODLUCK」という文字が点滅していた。その前で苦笑いする客の男性が2人。後で取材して驚いた。1人はなんと僧侶(63)だった。もう1人は無職の男性(79)で、2人とも次の日に釈放されたが、僧侶は「時間があったので来た。好きだからやっている」。男性の方は「年金暮らしだが、賭博が大好きでやってきた」と話したという。僧侶はお布施で賭博をしていたのだろうか、あきれてしまった。

 佐藤容疑者は「悪いと知りながら、職もなかったのでやった」などと供述。1日の売り上げは「20万円くらい」と話し、客の中には1日で25万円負けた人もいたという。

 捜査員は店内を丹念に調べ、ゲーム機と現金などを押収し、運び出した。捜索が終了したのは翌日の午前1時ごろだった。

 ■2000円が100万円に

 県警によると、摘発された店は昨年12月に開店したばかりで、経営が軌道に乗る前の摘発だった。24時間営業で、1日あたり多くて10人ぐらいの客が訪れていたという。1回に最高2千円を賭けることができ、最も倍率の高いロイヤルストレートフラッシュが出ると、500倍で100万円をもうけることも可能だったという。

 店に名前はなかった。一見客は入れず、鍵を二重にかけ、客の出入りを監視カメラでチェックするという警戒ぶりだった。

 県警の摘発を逃れるため、この店と同様に、届け出をせず店名も掲げない賭博店が増えており、「アンダーグラウンド化」が進んでいるという。以前は、風営法で定められた「遊技場営業」のゲームセンターなどとして許可を受けた店が、裏で賭博をやっているというケースがほとんどだった。店名を掲げないのは集客には不利だが、警察の摘発が進んで店側が警戒を強めているための影響とみられるという。

 捜査関係者は「店の存在自体を隠しているため、店を探すことから捜査が始まる。大変だ」とため息をつく。

 ■いたちごっこ

 県警には、さまざまな情報が入ってくる。「変な声がする」「人の出入りがおかしい」「賭博をやっていると聞いた」…。うそか本当か分からないような情報を手がかりに、実態把握を進めていく。捜査は人の出入りや店の周辺のチェックなどから始まる。

 店側も神経をとがらせ、異変を感知するため、ビルの外に人を立たせたりして警戒は怠らないという。捜査関係者は「手探りの状態からスタートすることが多い。何よりも警察が動いているということを店側に察知されないようにすることが一番大変」と内情を話す。店側の警戒で事前に客を装って店に入るのはかなり難しいという。客や出入りしている人からの情報を積み重ね、最終的には摘発の日時を決めるのだ。

 うまく準備が進み、摘発となっても、客がいなければ常習賭博罪は成り立たない。厳重な鍵を壊している間に、非常階段から逃げたり、金を隠されたり…と証拠隠滅を図る店もある。捜査関係者は「突入のタイミングが難しい」と漏らす。摘発にはかなりの労力と神経を使うのだ。

 捜査関係者は「摘発しても、ほとぼとりが冷めるとまた同じような店が出てくる。いたちごっごの部分もある」と話す。

 ■主流はパチスロとカジノ

 県警によると、一昔前の喫茶店などに置かれたゲーム機全盛時代、賭博の世界で流行したポーカーゲーム機店だが、最近は少なくなっている。パチスロのほか、バカラやブラックジャック、ルーレットがあるカジノが主流になっている。

 捜査関係者は「ポーカーは地味で華やかさがないからではないか」と話す。10年ほど前に取り締まりが強化され、店が減ったことも廃れていった原因とみられる。

 一方で客を集める「闇パチスロ店」。勝ち負けが大きいギャンブル性の高い「4号機」と呼ばれる機種を置く。この機種にのめり込み借金を重ねた上の犯罪が相次ぎ問題化し、平成19年7月までに一般のパチスロ店から撤去された。若い人を中心に人気が高く、機械が余っていることもあり、裏で流通したという。

 ポーカーゲーム機賭博は客と店が金を賭ける「常習賭博罪」に当たる。カジノや丁半賭博などは客同士が金を賭け合う「賭博開帳図利罪」に当たり、店は一定の手数料「寺銭」を徴収する営業方法を取る。店としては後者の方が、安定した収入を得ることができるという。

 「ポーカーをする人は金と時間に余裕のある高齢者が多い。根強いファンやマニアがいる」と捜査員。今回摘発されたのも60歳以上だった。パチスロ店で摘発されるのは30〜40歳代が多いという。 

 県警幹部は「客がいるから店もなくならない。摘発は続けていかなくてはならない」。賭博の根深い実態を吐露した。

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過酷勤務知りながら運転を容認、書類送検(読売新聞)

 三重県四日市市の東名阪自動車道で昨年10月、大型トラックの運転手(38)が男性警備員(59)をはねて死亡させた事故を巡り、県警高速隊は22日、運転手が過酷な勤務状況だったのを知りながら運転を続けさせたとして、運送会社「ロジネスク」(兵庫県小野市)と、運行責任者の同社支店長、配車センター長を道交法違反(過労運転容認)の疑いで津地検に書類送検した。

 同隊などによると2人は、昨年10月19日〜21日、運転手が仮眠や休憩が十分取れない勤務スケジュールだったことを知りながら、運転するのを容認した疑い。2人は容疑を認めているという。

 運転手は10月19日未明に会社を出発。栃木、埼玉県などを回って兵庫県に戻り、再び東京に向かう途中の21日午後7時40分頃、事故を起こした。運転時間41時間、走行距離は2020キロに及び、その間の仮眠は計6時間半程度だったという。運転手は自動車運転過失致死罪で禁固3年、執行猶予4年の判決が確定している。

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